絵描きの篝火

絵描きの光となる情報や、絵を鑑賞する方へ向けた画家からのメッセージ

絵は育児?自分の絵に自信が持てない人へ【絵の上達ヒント】

こんにちは、木炭とパステル画家のクロマトです。
今回は、自分の絵に自信が持てない方へのヒントとなるプレゼントです!

 


【創造するということ】

 

絵を描くということは、創造するということ。
生み出すということ。
創作するという行動は
私は小さな出産だと思っています。
悩んだり、苦痛を伴ったり
少なからず「産みの苦しみ」があるものなのです。

人によっては精神へのダメージが大きかったり
作品の完成後に、産後鬱のような状態になってしまう方もいるでしょう。

今回お話することは
上手い下手など関係ありません。
あなたが制作した作品に自信を持てるような内容になっていますので
ぜひ最後まで御覧ください。

 

【絵は育児】

 

私は独身ですし、子供もいませんが
絵を描くことと、出産・育児は少し似ているなと思います。
描くだけ描いて、発表して
それだけではそこで終わりなのです。
「自分の作品を育てる」ということが大切になります。

親が何もしない、誰にも身の周りのことをしてもらえない赤ちゃんはどうなるでしょうか。
育ててくれる人がいない赤ちゃんはどうなるでしょうか。
あなたが描いた絵は
紛れもなくあなたから生まれた絵なのです。
可愛い可愛い、あなたにとって世界で一番愛すべき子供なのです。
あなたは、あなたの絵の生みの親です。
他人から何を言われようと、あなたは親なのです。
描き続けていれば、それはもう大家族です。

「絵を育てる」とは一体何なのか。
それは作品それぞれを発信し続けてあげることです。
過去の絵でも、「◯年前に描いた絵です」と
お披露目を1度で終わらせずに認知してもらうことが大切だと思います。



 

【絵の毒親にならないで】


「自分には芸術センスがないから・・・」
「他の人みたいに上手く描けないから・・・」
そういう方も多いかと思いますが
他の子と比べる前に、自分の絵をしっかりと愛してあげてください。
完璧な人間がいないように
完璧な絵も無いのですから
そこで何より大切なのが愛情です。人も作品も。

そうやって過ごすうちに
他人が勝手なイチャモンをつけてくるかもしれません。
あなたは、それにどうか負けないでください。
例えば「下手だ」と言ってくる人がいたとして
それは、あなたの愛する子供が「出来損ないだ」と言われるのと同じで
そんな身勝手な意見から守ってあげられるのは、他でもなくあなたしかいません。
あなたの絵にとって
あなたが毒親にならないようにしてあげてください。
心配なら無用です。大丈夫です。
あなたの絵は
絵を描こうと思って絵を描いたあなたから
生まれるべくして生まれた絵なのですから。
何を言われても、誇って良い作品なのです。

 

完成なんて無い?絵のゴールの決め方に悩む人へ【絵の上達ヒント】

こんにちは、木炭とパステル画家のクロマトです。
今回はこんなお悩みを抱える絵描きさんへ、ヒントになるような情報のプレゼントです!

●絵はどこで完成にしたら良いの?
●終わりがわからなくてつらい

私の経験からお答えさせていただきます!

 



【絵に完成なんて無い】

 

正直、作品制作に完成などありません。
画材によっては、紙が弱って物理的に描けなくなる事もありますが

私は、白紙こそが完成型だと思っています。
まっさらでゼロの状態、そこに私たちは1,2,3と足していき
完成された白紙を汚して、未完成にしていくのです。
だから描けば描くほど、どんどん終わりがなくなっていき
私たちは思い悩んでしまいます。

極端な話、一生ひとつの作品を制作し続けられてしまうのです。
そこで、「どこまで足したら完成」というラインを決めてみませんか?

 

 


【制作時間を決める】

 

終わりが無いなら、作っちゃおう!という案です。
1時間で完成!とか
1日で何が何でも完成にする!
という、「時間制限を設けてしまう」方法も有効です。

私の場合ですと、ひとつの作品あたり12時間まで!と決めています。
先ほどもお伝えした通り、ゼロに足し続けるのが私たち絵描きなので
完成までの時間が決められている事で安心できる部分もあるでしょうし
制作時間が決まっているからこそ、オーバーしないように頑張る事もできます。
実際、美大予備校では時間制限が設けられて課題を行っていました。

↓こちらは「4時間まで!」と決めて描いた2014年の作品です。

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【自分に送るいいね】

 

もう一つ、完成ラインを決める案をお伝えします。
自分の作品に、「自分にいいねを押せるか」というゴール地点の設置です。
私たち絵描きは、完璧主義者である事が多いと思います。
もっと完璧に!もっと完璧に!
その感覚自体はとっても素晴らしい事だと思いますが
完璧を求めるあまり延々と制作が続いてしまったり
かえって全体のバランスが崩れていってしまう事もあります。


楽しく飲める、ほどほどのお酒
美味しく食べられる、多すぎない食事
絶妙に崩れない程度のジェンガ
そのようなバランスが大切になってきます。

そこで、ある程度制作を進めたら一旦絵から離れてみてほしいのです。
外出したり、YouTubeの動画を見たり
そのあとにちらりと自分の作品を見てみてください。
この時、集中して描いている時よりも客観的になっていると思います。


ちらっと見て「自分にいいね」が押せるか想像してみてください。
SNSに投稿するのであれば尚更ですが
ちらっと見て良い感じのバランスを保っている事も重要なのです。
そこでもし、自分が自分にいいねを押せるなら
そこを完成のラインにするのも面白そうですね。

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画家クロマトの過去 〜美大予備校編〜

高校2年生中盤。俺は美大を受験する事に決めた。
決めたのは、ずっと絵を描いてきたから。
描いてきたのは、唯一褒めてもらえる事だから。
別にやりたい事があるわけじゃない。
ただ、世界は俺を見くびってる。
黙らせてやりたいだけだ。
これは、これから俺が挑む闘いの話。

 

●目次
・挑戦
・講評
・三年
・迷走
・狂気
・異変
・飛翔
・墜落

 

・挑戦

美大の予備校に通い始めた。
デッサンを繰り返す日々。
俺の通う高校は美術系で、その中でも上手いと言われてきたけど、
まったく、驚いたよ。
浪人生も一緒にデッサンを行うのだが、化け物か。
レベルが違いすぎて出鼻を挫かれる思いだ。

それでも俺はやるぞ。打ち勝たねばならない。
鉛筆を削るカッターを、
じゃなくて
尖り抜いた鉛筆を、未来に俺は突き刺すのだ。

 

 

・講評

制限時間を設けられて、デッサンを行う。
4時間デッサン、6時間デッサン、時には12時間。
静物、石膏像、自画像などなど
その後には講師による講評会が行われるんだ。
全員分、順位が付けられて
ひとりひとりのデッサンが講評される。
噂によると、有名な予備校は上位生徒にしか講評してくれないらしいから
うちはまだ優しいほうか。

とはいえ、俺の順位は30人中15位をいつもキープって感じで
なかなか成長せず、酷評続きだった。
あれ、俺、上手いはずだったんだけどなあ。
そんな幻想は早々に捨てる事になった。

 

 

 

・三年

さて、俺もいよいよ高校3年生。
まだまだ遠かったはずの受験ってやつの姿かたちが
煙のなかから輪郭を覗かせ始めた。
俺のデッサンと言えば、そりゃ相も変わらずで。
学校が終わって、予備校に行って、酷評される日々だよ。
俺の家庭には金が無いから、バスに乗って通えなくなってきた。
バス停を辿りながら自転車で通わざるを得なくなってきた。
それでも俺は行くよ。
そのくらいの根性、持て余すほどある。

 

 

・迷走

夏休みに入った。
学校が休みだから、予備校で一日に10時間はデッサンやデザインの勉強をする。
それでも俺の順位は上がらない。
さすがに焦りを感じ始めた。
友達や浪人生の目もギラつき始めた。

講師の批評にも熱が入ってきて
講評会ではいつも散々な言われようだ。
「ここが駄目」、「そこが駄目」、「やる気あるのか」。
頭ではわかってるはずの事で、まったくの正論だから
すべておっしゃるとおり。

俺はいったいどうしたらいい。
なんで順位が上がらない。
順位、順位、順位、順位。
理想と現実がステゴロで殺り合ってる。
心が砕けかけたら、トイレで30秒寝て、また戻る。
どうしたらいい。
描けばいい。
そりゃそうなんだけどさ。
どうしたらいい。
描けばいい。

 

10月になった。自転車がパクられた。
学校では、受けりゃみんな受かるような専門学校に推薦で受かった奴らが騒ぎだした。
ギャーギャーうるさい。
その騒音のロープが俺の首を締め付ける。
うるさい、うるさい、うるさい。

 

 

 

・狂気

本格的に受験モードになってきて
学校にも行かなくて良くなった。
自転車が無いから、歩きで予備校まで通う事にした。
片道7km、往復14km、毎日歩く。
金が無いから、昼飯はコンビニのチキンとエナジードリンク
体が痩せ細ってきたけど、どうでもいい。
それでも俺は絵を描くよ。まだそのくらいの根性はある。
根性はある?うるさい、それでも俺はやらねば。

毎日10時間、予備校にいて絵を描いても
何も上達しない。いっさい褒められない。順位も上がらない。
よく聞け俺よ、それはな、練習量が足りないんじゃないか?
そうだな。そうに決まっている。
才能もなく、努力も下手な俺は
他人よりもずっと時間をかけて練習しなければならない。

俺は家でもデッサンを始めた。
狂ったようにデッサンを始めた。
歩いて、予備校に行って、歩いて、家でまた描く。
早朝の4時まで描いて、2時間寝て
6時に起きて、予備校に歩いて行く。
もうヤケになっていた。
目が痛い。心が痛い。
焦燥感、劣等感、孤独感、順位、順位、順位。
あいつら全員蹴り落としてやる。
そういう世界なんだろ?
なら俺に躊躇いは無い。
全員だ、全員。一人残らず本気でかかってこい。
俺のこの一筋の蜘蛛の糸に、群がって来てみろ。
そいつら全員蹴り落としてやる。

 

 

・異変

真夜中の部屋で、いつも通り追い込みでデッサンをしていた時
異変が起きた。
急に視界がぼやけてきて、膝の力が抜けて
フローリングにぺたんと座り込んだ。
体中から汗が溢れ出てきた。
息が切れる。

俺、どうした?

鼻の奥がむずむずする。

くしゃみをひとつした。

鼻血を吹き出した。

目の前に血溜まりができた。

そこに頭から倒れ込んだ。

止血をしたいけど体が動かない。

俺は世界に殺されるのか。
このまま、このまま。
いや、まだ駄目、まだ駄目。
動け、動け、動け。
俺に絵を描かせろ。
俺に絵を描かせろ。
描かせろ!
描かせろ!

絵を

描かせてください。

お願いします。

 

 

ーーーーいつの間にか眠っていたようだ。
目覚ましが鳴って、夜が明けていた。
鳥のさえずりが、俺を嘲笑しているように感じた。
血まみれの服を着替えて
また今日も、予備校へ出かける。
俺はまだ終わりじゃない。
俺はまだ終わりじゃない。

 

 

・飛翔

今更なんだけどさ、
睡眠ってやっぱ大事だね。
ちゃんと寝よう、さすがに。
じゃないと死んじゃうかも。
寝よう、さすがに。

もともとロングスリーパーの俺は
予備校から帰ったら即寝る事にしたんだ。
そしたらすごい事が起きたんだよ。
劇的に自分のデッサンが変わった。
そうか、経験値は貯まってたんだな。
寝ないせいでレベルアップができなかっただけで。
講師にも「あれ、もしかして寝た?」って言われて
「寝ました笑」って言ったら
「やっぱり笑」って。

あとさ、毎日往復14km歩いて通ってるって話をしたらね
講師のひとりが自転車を譲ってくれたんだよ。
「チャリ買い換えたいんだよね」って。
まだ全然、使い古してもいなさそうな自転車をさ。
かっこいいなって、ちょっと泣いた。

 

それからというもの、俺の順位は平均2位
ときたま1位をとるまでになった。
でも、それと同時に気付いた。
俺は蹴り落としてしまった。
友達も、先輩も、蹴り落としてしまった。
正しいのか、罪なのか。
みんなの目が必死になってる。
誰も会話をしない。
きっと、敵対してるから。
あんなに仲良しだったのに。

講評会では、順位の低い人はボロクソ言われるから
少なくとも誰かひとりは泣き出す。
すすり泣く人。大声で泣き出す人。
世界でいちばん気まずい空間だ。
睡眠をとって、精神が少し安定した分
周りの景色やみんなの感情がハッキリ見えてしまって
心が痛んだ。
ここで我に返ってしまったらきっと終わりだ。
俺は今更、善人にはなれない。
蹴落とすつもりで蹴落とした人に、かけて許される言葉があるはずもない。

 

 

・墜落

いよいよ受験直前。
いかんせん、うちには金が無いから
受けられるのは1校だけ。
講師にはいくつも受けておけって言われたけど
しょうがないじゃんか。
狙うのは大手大学。
講師にも「この実力ならほぼ受かるよ」と言われた。
へっぽこだった俺でも、ここまで来たんだ。
さあラストスパート、クライマックス
真っ向勝負、鉛筆って名前の刀を引き抜く。

 

受験当日。
前日の雪から一転、良く晴れた。
春ってのは、待つものじゃない。
自分で引っ張ってくるものだ。

実力は充分出せたぞ。
これは勝ったな。
これが俺の本気。
一騎打ち、現実と俺は互いに一閃した。

 

結果は
 

補欠合格にも入らなかった。
負けたのは俺の方だった。
崩れ落ちて振り向くと
澄ました現実の、山のような背中が見えた。

負ける事を知らないままの勝ち気な孤独は
すでにすべてから負けていた。
悪人に相応しい末路。
これが罰か。
これが罰なのか。

俺に、償えるだろうか。

もしくは。

もしくは。。。

 

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画家クロマトの過去 〜高校入学編〜

僕は高校に入学した。
「高校生」。うん、なんか良い響き。
今日から「高校生」だってさ。ふふ。
これは、僕のこれから起こる事の話。

 

●目次
・憧憬
・労働
・現実
・絶望
・大人
・別離

 

・憧憬

高校生と言ったら、なんてったってバイトができるんだよな。
僕は憧れていた。
お店のレジの人に。
どうでもいいような僕に、温かに接客してくれて。
幼い日のコンビニのおばちゃんみたいに。
僕もなれたらいいなって思ったんだ。
このワクワク、なんだろな。

 

・労働

僕はファストフード店で初めてのアルバイトを始める事にしたんだ。
僕は昔から誰とでも仲良くなれるし
きっとね、それはお客さんにもできる事だと思うんだ。
大人と一緒っていうのは、ちょっぴり怖いけど
ほら、社会勉強って言うだろ。
おっしゃ、なら学んでやるぜ。
このワクワク、なんだろな。

 

・現実

レジなんて任せてもらえなかった。
思えば、ファストフード店のレジって女性ばっかだよな。
まあいいか、しっかし
僕、ハンバーガーとか作れるかな。
でも、みんな温かく迎えてくれた。
仕事を学ぶなかで、失敗しても
みんな親身に教えてくれた。
このまま、成長していければ良いと思った。

でも

僕の失敗には終わりがなかった。
「あの子は駄目」、「使えない」
そんな言葉が嫌でも耳に入った。
見られていると
監視されていると
どうしても間違える。
手が震えて思うように動かない。

作っている途中のハンバーガーを落とした。
教えてくれていたお兄さんは、
「しょうがねえやつだなあ笑」という表情。
心改め、作り直した。
作り直している途中にまた落とした。
お兄さんの表情が変わった。
昼から急に真夜中になるように。
血の気が引いた。
この物悲しさ、なんだろな。

 

・絶望

コーヒーやティーパックが入ったゴミ袋は異常に重い。
それらを集めたゴミ箱のキャリーはもっと重い。
それをゴミ捨て場まで運んで行くのだが
もともとヒョロヒョロで、生まれ付き腰の悪い僕には荷が重すぎた。
戻ってくるまでの時間が遅いから
サボっていると思われたのだろうか
全員の目が冷たくなった。
かつて優しかった人も怒鳴りたてる。いっせいに。
そして、同じタイミングで入った子と比べられた。

「あの子はもうあそこまでやれるのに。」

「すみませんじゃなくて行動で示せよ。」

「ゴミ捨てが遅すぎるぞノロマ!」

「甘えるな!失敗するな!」

 

謝る事が癖になっていった。
それから毎日泣いた。
母親に心配はかけたくないから
お風呂場やトイレで泣いた。
それでも電話がかかってくる。
ふだんは物静かなおばちゃんから。
「もっと頑張らないとやっていけないよ」
わかってる。
それはわかってる。
わかってるんだって。
ガラケーをパタンと閉じて頭を抱える。
味方なんていないのか?
そりゃそうだよな。
僕はこんなに駄目なんだもの。
この物悲しさ、なんだろな。

 

・大人

僕はこのバイトを辞める事にするよ。
もう駄目だ。僕がいちばん駄目だ。
でもさ
最初あんなに期待してくれた人たちを裏切る事になるんだよな。
だから、言い出すのも申し訳ないというか。
何の価値も無い少年を育てようとしてくれて
何も成し遂げられないまま去るなんて。

仕事中は怒られて、終わったら事務所で急にみんな優しくなる。
あのコントラスト、何だろうな。
ネックウォーマーを下まぶたまで。
ニット帽を上まぶたまで。
すれ違う人みんな、敵に見えちゃうよ。
もう誰も信じられなくなっちゃうよ。
この姿、まるでテロリストみたいだな。
いや、テロリストか。
そう、僕はテロリストだ。
この鞄いっぱいに爆弾を詰め込んで
今日あの店を爆破してやるんだ。
なんてね、そんな妄想、もういいよ。
あれが大人だと言うなら
僕は大人になりたくなんてないね。
この物悲しさ、なんだろな。

 

・別離

辞めるって言った。
心の内は「言ってやった」。
周りからすれば「やっと言ってくれた」。
その安堵の表情が悔しくてたまらなかった。
自分に対して悔しくてたまらなかった。
なんにも、なんにもできなかった。
最終日、背を向けた店に
正体不明の憂鬱。
見上げた星空が綺麗で、うざったくて
睨みつけた。

やっと解き放たれるのに
この物悲しさはなんだろな
この物悲しさはなんだろな
自分の頬を殴りつけた。
もひとつ、殴りつけた。
もひとつ、殴りつけた。
もひとつ、殴りつけた。
くらついて、酒を知らぬ10代の酔っ払い。
この痛みは、腫れてきた頬は
戒め。僕への戒め。
法で裁けぬ罪人への罰。
己で罰を与える。

さよなら、夢見がちな僕。
さよなら、素晴らしい世界のなかの僕。

もひとつ、殴りつけた。

青と赤と緑の点々、視界を支配して
膝の力が抜けて、もたれかかった真冬の柱の冷たさ。
およそ証明されてしまった。
僕は社会から外れている事。
もひとつ殴りつけようとして
腕に力が入らくて、だらしなく太ももに墜落した。

この物悲しさ、なんだろな
この物悲しさ、なんだろな

 

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